現役介護士が介護を辞めるまでの実録2
「介護離職体験記 その2」
利用者さんも、一緒に働いている職場の人も大好き。だけど、「もう、この職場じゃ無理だ。」と感じた時 後編
仕事に生かせるスキルが、爆弾と変わらない
男性上司が、私を気に食わない理由は他にもありました。
私は前職での得た、あるスキルをもっていたのです。
それは、男性上司の苦手な分野でした。
男性上司は、どんな小さなことでも自分より他の人ができるとなると全力で嫌な感じでぶつかってくるので、私は爆弾を抱えているようなものでした。
恐れていたことに、男性上司のさらに上からの指名である仕事をすることになりました。それは、例の爆弾スキルのゆえです。
私は、そのころには上司の嫌なところがはっきりわかっていたので、指名された仕事の説明をする男性上司の無表情に恐怖を感じました。
書類も投げるように渡してきました。
床におちた書類を拾いながら、こんな変な人(男性上司)がいるのにどうして会社はなんとも思わないのかと考えていました。
男性上司は、わかりやすく嫌がらせを開始してきました。
「仕事の妨害」男性上司はそれしか考えていなかったのです。
仕事に来ているのに、仕事にならない日々
「仕事の妨害」
男性上司がしたことは、他の仕事を振ってきました。
それも、私ができる範囲を超えた内容でした。
その上、男性上司から参加を求められる意味のないミーティングに時間を取られる日々。
「有能だって聞いていたのですけどね~。もしかして、スキル偽装?」
その言葉に負けたくなくて、自分の生活の時間を削って仕事をしました。
でも、そんなことでは解決できなかったのです。
できないと、叱責してきました。いない時の誹謗中傷もひどかったそうです。
そこには、私の上司であるAさんもいました。
さすがに、他の職員もこの状態がおかしいと心配していました。
「仕事していくのが難しいな。」と思い始めていました。
この時点で、もうギリギリだったのですね。
でも、辞めたらこの仕事の山はどうするの?同じ職場のみんなに迷惑がかかる。
前から、相談していましたが、改めて私は、Aさんに相談することにしました。
彼(男性上司)のことを上司のAさんに相談してみた
上司のAさんに相談したところ、最近の男性上司の私に対する対応は気になっていたとの返事。
「彼(男性上司)の悪い癖なのだけど、こんなにひどいのは初めてかもしれないわ。
それをあなたは、仕事と割り切っていてすごいなと思っていたの。見どころがあるから彼なりに、期待しているのかもしれない。
私から彼に話してみるわ。あなたは仕事が早いし、私も応援しているの。また何かあったら言ってね。」
その言葉を聞いて何かひっかかるような、腑に落ちないものを感じたのです。
原因がはっきりしていて、部下から仕事が回らなくなっていると言っているのに応援する?
それまで、Aさんに対していい印象しかなかったのですが、そこにちょっと黒い点のようなものが現れました。
男性上司に話すという事も、あまり期待できないなと思ってしまいました。
味方であるAさんにそんなことを思う自分に自己嫌悪感をもってしまいました。
Aさんは、男性上司に話したようですが、それが見事に逆効果になりました。
辞めることを決めた決定的瞬間
上司のAさんが話したらしき翌日、他の職員の前でいつもより長く叱責してきました。
内容は、つじつまの合わないことが多く男性上司は、私の目を見ないで話し続けます。
昨日男性上司の贔屓のチームが逆転で負けたことを朝刊で知ったので、荒れるだろうなと思ったけど、やっぱりと思いながら聞いていました。
でもなんで、それが仕事に関係があるのだろう。
そんなこと仕事に持ち込んでいいの?私仕事に来ているのに、これって意味あるの?
頭の中で、そんな言葉が浮かびました。
仕事を私1人でこなす理由が聞きたかったのと、不明な点も多かったので私は静かに質問しました。
すると男性上司は一瞬だまりましたが、目つきが変わってそれには答えず捨て台詞らしきものを吐きすてて去りました。
他の職員は、顔を見合わせています。
「大丈夫?」何人か、声をかけてくれました。
「全然、大丈夫じゃないよ。」と、私は答えました。
「私、退職するわ。」
その言葉に、周りの反応はこうでした。
優しい言葉を言うだけだった上司Aさん。誰のために?
私が退職の意思を口にすると、他の職員が困った顔をしました。
けれど、そこにいたAさん以外ほぼ全員が「あれはツライよ。気持ちは、わかるよ。」
「自分たちもあんな風にいわれるのかな。」
「少し話したいけど、あとで連絡する。」と言ってくれた人もいました。
Aさんは、その場で私を別室に誘導しました。
Aさん:「辞めるって冗談だよね?なんで?急に思ったの?」
私:「今、男性上司に私が無茶苦茶言われているときにその場にいましたよね?」
Aさんは、ハッとした顔になりましたが気を取り直して話し始めました。
Aさん:「確かに男性上司はあなたに対してはひどいけど、私も似たような目に合ってきているから、我慢できないのもわかる。だから私は、男性上司に改善するように話したりしていたのよ。でもこんなに急に辞めたいって言われたら、困る。そうなる前に相談してほしかった。」
私:「私なんども相談していました。男性上司からのあの対応や、陰で酷く言われている場面でAさんもいた事が多かったと思いますが。」
Aさん:「あの男性上司に、あなたははっきり言える強さがあるから、大丈夫だと甘えてしまっていたのね。そこまで思いつめていたのに、気が付いてあげられなくてごめんなさい。上司として、恥ずかしい。」
Aさんは涙を浮かべています。
一見、優しい言葉なのですが私は、どんどん冷め切っていました。
あの状況で、気が付いてあげられなかったって言うのは、おかしいでしょ?
男性上司はおかしいけど、この人もおかしい。なんで泣いているのだろう。
「あなたがいなくては、困るの。利用者さんもみんなも困るの。一緒に頑張っている人のこと、見捨てるの?それでいいの?業務は見直すから、退職は考え直してほしい。」
私:「男性上司のサンドバッグがいないと困るというわけですか?」
そこまで言ってしまうほど、疲れていました。
Aさんは、無言になりもう泣いていませんでした。
こういう人だから、あの男性上司とやっていけるのだと思いました。
私は、その日の夜に退職届を書き上げました。
すらすら書けて、その日はぐっすり眠ることが出来ました。
(その3に続く)
現役介護士が介護を辞めるまでの実録3
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