現役介護士が介護を辞めるまでの実録3
介護離職体験記 その3
パワハラ時はスルーだったのに?辞めると言った途端の周囲の変化
退職願でなく、退職届を施設に出した途端に周りの対応は変わりました。
そこから私は、腫れ物を触るように接してこられました。
退職日までの職場の雰囲気は、「お通夜」みたいでした。
同僚は、その雰囲気をどうにかしようと気を使って明るく振舞ってくれました。
このことは、今でも申し訳ないと思っています。
問題の男性上司は、退職届を出した途端にまったく接触しなくなっていました。
男性上司が理由で辞める人が多すぎることは、今回は、さすがに問題視されて私が辞めることでいよいよ施設側も放置できなくなったのです。
いまでも、自分のポストが危ういのにパワハラをしていたのかと思うと理解に苦しみます。
上に詳細を報告せず丸く収めようとしていた上司Aさんも私に話しかけてこなくなっていました。
私はこの状態に、実に白けていました。
目に余るパワハラを受けていた時には、何も手を打たなかったのに辞めるといったとたんに職場が、「誠意」を見せだしたからです。
ほとんど話したことのない上層部の人が私に面談して、
「いま、辞めたらもったいない。せっかく頑張った意味がなくなる。」
「男性上司は、更迭される予定だから辞めなくてもいいのでは?」
「君は、利用者さんからとても信頼されて職員としての評価が高い。有望な職員だから、辞めないでほしい。」
慰留のために言われた言葉は、「職場からの誠意」を見せるというアリバイつくりのようなものです。
私が返した言葉は、「どうして今まで、あの男性上司に対する対策がされていなかったのですか?」でした。
私の問いに上層部の人は、男性上司がああなったと思われるプライベートな事情を教えてくれました。
私はそれを聞いて男性上司の口癖である、「で?」と言いそうになりました。
言っても無駄なので発言しませんでしたが、そこまで問題を把握しておきながら、どうしてあの男性上司を放置していたの?という気持ちでした。
みんなの事を考えて我慢しろ?それ本気で言っている?
同じような状況で苦しんでいる人は少なくないと思います。
私が体験したより、もっとひどい目にあった人もいると思います。
持ちこたえているのは、「我慢」の心があるからです。
仕事をやめられない理由について考えると、
1.利用者さんのことを思うと辞められない。
2.自分が抜けたら同僚に仕事の負担がかかる。
3.仕事を途中で投げ出すとは無責任ではないか。
どれも立派な理由だし、この3つのことは退職を引き留めてきた数人の同僚にも言われました。
引き留め方も良心に訴えるというか、責めるという感じでした。
引き留めてきた同僚たちに、「じゃあ、あのパワハラにどうすればよかったの?」と問うと、
「えっと、なんとかうまくやって…。」という歯切れの悪い返事でした。
「あなたはハイハイ聞き流さず刺激するから、男性上司がああなった。」と言った同僚もいます。
その同僚に事細かに説明すると、謝ってくれました。このように、事情を詳しく知らない人ほど、好き勝手言ってきました。
私に「他の人の事をかんがえてね。」と言うのに「自分の問題は自分でなんとかして。」ということなのです。
これってどういうことなのでしょうか?仕事は確かに楽しいことばかりではないのですが、我慢が主というのは、おかしな状態です。
施設側は、男性上司の個人的な事情を考慮する「優しい」気持ちがあるのに、問題行動は放置していた。被害を受けていた私に対しては励まし見守っていただけ。
我慢できるところには我慢させるというのは良くありますが、させすぎました。
介護の世界は、他人に尽くすことを求められすぎだと思います。
今回の件で、物事を良いようにとらえるところで完結して、醜いものを正面から見ないようにしようとする人が少なくないと感じました。
「介護の仕事は好きです。続けたいと思っています。だから、この職場から離れたいです。」
私はこの言葉で、引き留める言葉を押さえて退職することが出来ました。
(その4に続く)
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