現役介護士が介護を辞めるまでの実録1
「介護離職体験記 その1」
利用者さんも、一緒に働いている職場の人も大好き。
だけど、「もう、この職場じゃ無理だ。」と感じた時
「もう、この職場で働くのは無理だ。」
私は1年前のある日、そう強く感じました。
そして働いている介護施設を退職することに決めました。
介護の仕事は好きです。大好きです。
利用者さんのこと、仲間でもある職場の人のことも大好きです。
人手不足が当たり前の介護業界なので、辞めると迷惑をかけてしまう。
その事を考えて何度も思いとどまりました。
でも、これ以上いたら私が壊れてしまう。
私は、自宅のPCで退職に関することについて調べました。
ネット検索では、調べるとわかりやすく説明しているサイトがありました。
いつから辞められるのか?
辞めるというのはどのタイミングで言えばいいのか?
書式は?
辞める時にする手続きは?
それらの事は、数分でわかりました。そしてこう思いました。
「なんだ、辞めるのって簡単だ。」
退職の方法を頭に入れると、自分の気持ちがすこし軽くなった気がしました。
その時は無事退職出来たら、この頭痛も、不眠もおさまるのかなと目を閉じました。
退職の原因は、笑顔の仮面をはずした男性上司のパワハラ
私が、そこまで思って退職を決めたのは、職場の男性上司のいわゆるパワハラが原因でした。
男性上司は、初対面はニコニコしていた人でした。
笑顔が地顔と言う感じの人で、温厚な人だという印象を受けるのです。
けれど、それは深くかかわらない人に対して見せている仮面だったのです。
仮面の下は、別人でした。
いつも不機嫌で、八つ当たり。いつも誰かをターゲットにしていました。
自分より上の立場以外の人には、目も合わさず挨拶もしません。
出勤した時から、口も利かず、物をぶつける音を立てながら席に着きます。
ぶつける音で男性上司の居場所がわかるという職場ジョークがあったくらいです。
時々、備品も破壊していました。でもみんな黙っていました。
その男性上司が理由で、何人もの同僚が退職していきました。
事情があまり伝わっていないポストにいた私は、あまり気にしていませんでした。
介護業界は離職率が高いという意識が強かったからです。
そんな私が、配置換えにより仕事をする上でどうしても男性上司と、かかわらなくては、ならなくなってしまいました。
そして、その上司の仮面の下を見ることになってしまったのです。
聞こえるようにつぶやく男性上司のパワハラ
最初は、男性上司も優しかったのです。けれど、4か月もたったころにだんだん地金をみせてきました。
男性上司のやり方はこうです。
別室にある男性上司のデスクまで仕事の報告をしに声をかけたところ、まずため息をつかれました。
その時の報告の内容は、服薬がうまくいっていない利用者さんの状況説明と相談でした。
そして、帰ってくる言葉が「で?」
自分が考えた対応を説明しますが、途中から首を左右にふって聞くのです。
そして、鼻で笑いながら「ちょっと、ちょっと~」と話を遮りました。
「だから、そういうことじゃなくて~。まずは、現状の利用者さんの薬の受け渡しはどうなっているかってことの説明が先なので~。」
私は、「で?」でそこまで読み取れませんでした。
あらためて薬の受け渡しの説明をすると、男性上司は聞いているのかいないのか、わからない様子。
男性上司が「わかりました~」と言うので、自分のデスクに下がることにしました。
その時、上司の言ったつぶやきがはっきり聞こえました。
「コイツ使えねえ~」
「はい?」と聞き返すと、男性上司は、笑顔でこういいました。
「あはは~。いいから、いいから。Aさん呼んできて。」
見間違いでなければ、手のひらで追いやるようなしぐさをしながら。
第3者には、事実と違うことを言う男性上司
報告も満足にできず嫌な気持ちだけ残って、私はAさんを呼びに行きました。
Aさんは、男性上司の同期入社の女性職員であり私の上司でもあり、男性上司にとってAさんは、唯一親しい関係でもあったようです。
Aさんは、ほかの職員からの信頼も厚く親しまれていました。
Aさんに、男性上司が呼んでいることを伝え自分のデスクに戻り書類作成をしていました。
しばらくすると、Aさんも戻って「ちょっといいかな?」と私のもとに来ました。
「男性上司の話では、とても大事な書類の作成中に、あなたがいきなり押しかけて来て利用者さんが薬をのまないからどうしたらいいですか?って、それしか言わない。見かねて何か言うまで黙ってぼんやりして立っていたって聞いたのだけど?あなたも新人ではないのだから、よく考えて上司に報告してね。」
事実と違うAさんの話を聞いてとても、びっくりしました。
いきなり押しかけていないし、利用者さんが薬をのまないからどうしたらいいですか?だけしか言っていないことはありません。
確かに「で?」と言われたときに、ちょっと間が開きましたが、ぼんやりして立っていたわけではありません。
私は、男性上司に言ったとおりに説明し、その時に薬の受け渡しについて先に言わなくてはいけなかったと言われたと説明しました。
Aさんは少し考えて、声を押さえて私に言いました。
「そんなことだと思った。彼(男性上司)は、仕事はできるのだけどね。すこし変わっているっていうか、難しいの。私も時々こういう風にやられることがあるの。わかっている人はわかっているから。気にしちゃダメよ。」
私はそれを聞いて、おかしいなと思いながら、割り切るのも仕事かなと思い込もうとしました。
けれど、それがいけなかったのです。
時々ハイテンションで優しくなる上司
男性上司はいつも機嫌の悪い時ばかりでなく、まれに機嫌のいい日もありました。
みんなに飲み物の差し入れ、ハイテンションで仕事に関係のない話をします。
ほぼ自慢話です。聞いていると小学生の時に書道の時間に段をとれそうだと言われたといった微妙な自慢でした。それも、字が上手くない人に話を振りながらです。
男性上司の機嫌がいいと、まわりはホッとするようでした。
でも私は気味が悪かったです。それは、その分荒れる日が来るからです。
あんまり晴れすぎると、つぎは大雨の予感がするのと同じです。
男性上司の機嫌は本当に不安定だったのです。
男性上司は、そこに居ない人を悪く言って目の前の人を褒めるということをするのですが、その時に、下手に同調しても相手をしなくてもいけなかったのです。
悪口に同調しないだけの私は、男性上司にとって可愛げのない奴になりました。
合わせて最初の報告の時に、事実とちがうとこと言っていたことを飲み込んだのがまずかったのか、男性上司は私に徐々に酷い態度をとられるようになりました。
(その2に続く)
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