訪問介護の体験談
私は、訪問介護でヘルパーとして働いています。
すぐに働かないと学んだことを忘れそうだったので、資格をとってすぐ働きました。
働き出してまもなく受け持った、いまでも忘れられない利用者さんがいます。男性の利用者A氏です。A氏は、奥さんに先立たれてひとり暮らしをしていたのですが、別世帯の息子さんに説得されて介護サービスを受けることになりました。A氏は認知症と持病がありました。ほかに大きな問題があったのです。それは、とても清潔ではなかったのです。
介護サービスが始まって、サービス責任者に同行しA氏のお宅にお邪魔しました。家はとても暗かったのです。建て付けの悪い襖を開けて現れたA氏はとても不機嫌でした。
他人が家に来ることが嫌だったのです。電気をつけてもらうと、モノとホコリが積み上げられた部屋が。床がほとんど見えず、座ることもできません。
まず思ったのは、「この家でどうやって暮らしているの?」でした。トイレに関しては、開けて一度ドアを閉めてしまったくらい衝撃でした。清潔でないお宅の共通点として、掃除道具がそろっていません。
A氏のためのサービスは、「掃除」とにかく「掃除」です。ところが、A氏はヘルパーを拒否です。とにかく、このままでは暮らせないレベルなのでどうにかしないといけません。
サービス責任者と担当ヘルパー数人でチームになって取り組みました。
あるヘルパーさんは聞き上手でA氏の心を開いてくれます。それを突破口にしてA氏に掃除道具を買う許可をもらいました。あるヘルパーさんは、元気いっぱい力いっぱい!なので、家中の建て付けの悪い窓という窓をあけ、A氏の心の扉もあけました。不用品の処分に踏み切ってもらえました。新人の私は、とにかく掃除です。
まず、掃除したのは「トイレ」です。洗剤の素晴らしさ、お湯の頼もしさを実感しました。
ヘルパーが一丸となって全体的に家がきれいになる頃、A氏はヘルパーの来る時間に玄関で待っているようになりました。どうにかトイレがきれいになった頃、それまで返事もしてくれなかったA氏が「ご苦労さん、ありがとう。」と言ってくれました。
ヘルパーの仕事をしていると言うと「すごい、私にはできない。」と言われます。できないことも確かにありますが、それをしないと困る人が目の前にいたら、自分がやらないとこの人は困ってしまうと思ったら、できてしまうのです。ヘルパーは確かに大変な仕事ですが報われることの多い職業だと思います。