現役理学療法士が理学療法士の仕事の現実を語るよ
現実では理学療法士がリハビリしても高齢者は悪くなって当たり前?
高齢者の方に対するリハビリは、理学療法士の業務の中でも大きな割合を占めています。
世界に誇る長寿国である日本では、元気な高齢者が増えています。
それと同時に、医学の進歩により今までは助からなかった重い病気の患者さんが一命を取り留めることにより、リハビリテーションの必要性が増えているのです。
高齢者のリハビリでは、疾患や怪我などリハビリが必要になった直接の原因以外に、「加齢」による体力面・筋力面の低下も伴うため、思うようにリハビリを進められないこともあります。
風邪をひいて寝込んだ数日間のうちにもガクッと状態が落ちてしまうこともあります。
しかし、筋肉は筋力トレーニングを行うことでいくつになっても鍛えられるという研究結果もありますし、高齢者だからといって決してリハビリができないというわけではありません。
肝心なのはもっと元気になりたいという本人の気持ちです。
理学療法士としてその気持ちにいかに寄り添うことができるかがとても大切です。
理学療法士のリハビリは期間限定?
ご存知のとおり、日本は超高齢社会です。当然元気なお年寄りばかりではなく、様々な病気や怪我等により入院する人がたくさんいます。
そのため社会保障費、とくに医療費が国の財政を圧迫しています。
ひと昔前までは、特に治療の必要はないけれど他に行き場のない高齢者を入院させる「社会的入院」という仕組みも当たり前でしたが、現在では必要性のない入院の継続はとても難しくなっています。
リハビリテーションについても同様で、リハビリができる期間はしっかりと期限が決まっています。
例えば脳梗塞の患者さんに対するリハビリであれば発症した日から180日間となっています。
この期間に集中的にリハビリを行ってもらい、なるべく良くなって自宅へ戻り、社会復帰してもらおうというのが目標となります。
順調にリハビリが進めば問題ないのですが、だれでも同じように回復するわけではないので、この決められた日数が悩みの種となってしまう場合もあります。
日数を過ぎたあとで転院先を探しても、リハビリを続けていける仕組みが今の日本の医療制度にはありません。
基本的には介護保険に切り替えることとなります。
今まで「○○リハビリテーション病院」のようなところで集中的にリハビリしていた患者さんにとっては、介護保険で提供できるリハビリはとても物足りないものとなってしまいます。
この医療保険と介護保険の切り替わりがスムーズに進められるかどうかが、理学療法士の腕の見せどころでもあり、突きつけられた課題でもあります。
理学療法士のこれから
今、理学療法士の養成校の数が非常に増えています。毎年10,000人以上の理学療法士が誕生しています。
このペースは明らかにハイペースです。
今のところ、「理学療法士になったのに就職先がない」という事態は起きてはいませんが、今後はより仕事の幅を広げていく必要があります。
理学療法士には「開業権」がないため、独立して自分の実力だけでやっていきたい、ということができません(ほんのごく一部、独立している人もいる)。
特に注目されている分野としては、「介護予防」という分野があります。
病気やケガの患者さんに対して病院や介護施設でリハビリを行うだけでなく、その前段階のまだまだお元気なうちから介護が必要な状態にならないように予防しよう、という分野です。
主に体操やマシンを使ったパワートレーニングを行い、筋力や体力の強化を目指します。
理学療法士の資格は50年ほどの歴史があります。
今後は今までにない変革の時期を迎えることでしょう。
柔軟に変化に対応し、新しいことにどんどんチャレンジできる人材が求められています。