介護職主任経験者が語る30代からの介護職
介護職主任経験者が語る!30代からの介護職
介護の仕事ってどうなんだろう?
転職候補として介護職を考えたことがある方も多いのではないでしょうか。
特に30代、40代と年齢を重ねてくると職探しも難しくなってきます。
そんな中、未経験でも挑戦することが出来る仕事としても魅力的なのが介護職ですよね。
しかし、実際に30代、40代から介護の世界に入ってもやっていけるのかどうか。
体力が必要だって聞くし、女ばかりの職場って人間関係も難しそうだし、3Kって言われているし・・・。
気になることはたくさんあると思います。
そして、その答えは「大丈夫!」
なぜ大丈夫だと言えるのか、介護職の主任として勤務していた経験者から見た「実際の介護職」についてお伝えしていきます。
30代、40代から始める方はたくさんいる
主任でしたからもちろん面接もしてきました。
介護職と言っても正社員もいればパートもいる。
実に様々な雇用形態があり、自身の生活に合わせたシフトが組みやすいというのは介護職のメリットの1つです。
30代の方はほとんどの場合パート希望です。
お子様が幼児または小中学生などまだまだ帰宅が早い事が多く、15時まで、16時まで、午前中、昼食介助が終わるまで等わりと短時間で週に3~4回という場合が多いです。
40代になりますとパート勤務の方ももちろんいらっしゃいますが、正社員希望で応募される方も多いです。
お子様が中学生以上になり本人の時間的余裕がある事と並んで教育費が必要になる時期であり、老後の事も考え始める為ですね。
そして実際に40代からでも正社員で雇用される例を何度も見てきました。
時間的にゆとりがある方が多いので融通が利き一緒に働く方からしても有難い存在です。
働き方によっては高収入
介護職と言うと3Kのひとつ、「お給料が安い」というイメージがあるかもしれません。
しかし女性が働くと考えた場合必ずしもそうとは言えないのです。
もちろん地域による差はありますが、「派遣」という働き方を視野に入れて探してみると意外と高収入での求人が多い事に驚くのではないでしょうか。
パートで働くにしても時給が1200~1500円という事業所も珍しくはありません。
また、夜勤が可能であるのならば、もちろんもっと収入を上げることが出来ます。
他にも実務経験をこなして介護福祉士の資格を取ったりケアマネージャーの資格を取得するなど、向上心を持って取り組めば介護職で月収30万稼ぐことも可能です。
しかも、知識と技術を身に付ければ実生活にも活かせますし、もちろん仕事としてもこの先長く続けることが出来、50代になっても安定した収入を得ることも可能です。
ケアマネージャーさんは60代でも活躍しておられる方が大勢いらっしゃいますよ。
介護職に転職する人ってどんな人?
30代、40代の方が未経験で介護職に転職して来るのはどうしてなのでしょうか。
実際に私が聞いた話では「同年代の女性がたくさんいるオフィスが苦手だった」「デスクワークがむいていない」「手に職を付けて安定した生活を送りたい」「夜の仕事に就いていたが、もっと真っ当に生きたい」「家庭を大切にしながら働きたい」という意見がありました。
どの意見も本当に納得ですね。
人それぞれきっかけは違っても介護を選んだ事は同じです。どの方も一生懸命。
そして、実はご利用者様である高齢者から見た場合にもあまりに若い介護士よりも30代40代の女性の方が頼みやすい事があったりします。
ですから、未経験だし若くないから無理かな、なんて思わず、是非チャレンジして頂きたいです。
今までの人生を歩んできたあなただからこそ、出来る事があるのです。
だけど人間関係はどうなの?イジメや派閥はないの?
どんな仕事であれ、転職する時と言うのは新しい職場の雰囲気・人間関係が気になりますよね。
介護職と言えば、男性もいるけれどほとんどは女性という職場です。
やはり少なからず難しい人間関係は存在します。
Aさんは施設で働いていました。
その施設にはBさんとCさんというリーダー的存在のパートさんがいます。
Bさんを慕うグループとCさんを慕うグループ。
Aさんはどちらにも属さず、けれどどちらとも仲は良く・・・。
Bグループからの愚痴に「そっかあ、けど、こうだから仕方ないんじゃない?」
Cグループからの愚痴に「そっかあ、けど、こういう考え方もあるもんね」
と毎日橋渡し役。
みんな個人的には良い人ばかりなのに派閥が出来てしまうのは残念なことです。
ある時、Aさんが退職することになりました。
BさんCさん、そのグループのスタッフが「Aさんはどっちの味方なのか分からなくて、本当はもっと話がしたかったけど言えなかった。もっと一緒に働きたかった」と言って涙を流しました。
こう書くと良い年をして大人気ないような気がしますが、実は独身の介護職員よりも主婦が多い介護職だからこそ、派閥が出来やすいのです。
それはなぜなのでしょうか。
介護職 人間関係を円滑にするコツ
女性、しかも主婦層が多い介護職ではどうしても派閥が出来やすいのが実情です。
しかしせっかく介護の仕事がやりたくて転職したのに、介護とは関係のない人間関係で悩み辞めていくなんてとてももったいないことですよね。
どうすれば派閥争いに巻き込まれず円滑な人間関係を築くことが出来るのでしょうか。
まずは派閥ができてしまう原因を探ってみましょう。
その中から円滑な人間関係を築くコツを見出すことが出来ます。
40代以上、家事が得意で責任感が強い人ほど派閥を作る
洗濯の干し方たたみ方、掃除の仕方、食器の洗い方に片付け方、ゴミの出し方・・・
一見、介護とは関係がないように見えてしまうこれらの家事。
実は、高齢者の介助をするには…もっと言えば生きていく為には切り離せない、このような仕事も介護職の大切な業務の一つなのです。
人間が生きていこうと思うと実に様々な家事が必要となります。
そのような家事専門のスタッフがいる場合には良いのですが、たいていの場合は介護職員がこのような業務を行います。
すると、お互いに長年 家事をしてきた主婦同士ですから、自分のやり方とは違ったやり方をする人と出会うことになります。
当然ですよね。
よく、妻と夫の家事のやり方や生活スタイルの違いが喧嘩のもとになったりしますね。
介護の現場でもそのような小さな不満が気付くと派閥になってしまっている。
残念ですが良くあることなのです。
具体的どの様なことがきっかけになるのか実際の例で見てみましょう。
介護業務には入浴介助や洗面介助があります。
毎日たくさんのタオルを使用するわけです。他にも清拭したり掃除したりストレッチに使ったりと洗濯するタオルは膨大な数にのぼります。
そのタオルの洗濯の方法。
・まとめてダーっと洗濯機に入れて、終わればまとめてダーっと洗濯かごに移す人。
・洗濯機に入れる前に1枚ずつにほぐしてから入れる人。洗濯機から出す時も1枚1枚絡まらないように取りだす人。
・きちんと洗濯ネットに入れないと嫌な人。
・柔軟剤が好きな人と嫌いな人。
タオルの干し方も
・洗濯バサミにぶら下げて干す人。
・竿に引っ掛けて干す人。
・几帳面にしわを伸ばして干す人。
たたみ方も
・二つ折りの人
・三つ折りの人
・四つ折りの人
片付け方も
・輪が見えるように気を付けて片付ける人
・向きなんて関係なくとにかく早く片付ける人
お分かりでしょうか。
洗濯一つとってもこれだけ様々なパターンがあるのです。
丁寧な家事を好む介護職員は、雑なやり方を見るたびに
「まったく、○○さんはまたこんなやり方して。家の中が想像できるようだ」
スピード重視で行う介護職員は丁寧なやり方を見るたびに
「またあんなに時間かけて。そんな事より他にもっと大切な仕事がいっぱいあるのに!」
こうしてお互いに少しずつ積もっていった不満が派閥に繋がっていくのです。
他にもありますよ。
・掃除機のかけ方が適当
・トイレの床まで同じ掃除機使うなんて信じられない(職員トイレ)
・あの人は排水溝に直接流す
・食器を下げるのが遅い
・食卓の拭き方が雑
・このゴミ袋もっと入るのに!
等々、実に細かいですよね。
普段からご家庭に於いて自分のやり方で家事をこなしている、特に40代以上の女性がよく口にする事です。
介護職員の派閥に巻き込まれないコツ
良い部分を見付け「すごいですね」と素直に伝える。
これに尽きると思います。
家事を丁寧にこなす事が出来ることも素晴らしい事ですし、逆に他の業務に充てる時間に回せるようにと手早く済ませる事が出来るのも素晴らしい事です。
「○○さん達がいつも丁寧にやってくださるお陰で施設なのにとても清潔感がありますね」
「丁寧にやってもらえると使う方も気持ちが良いですもんね」
「いつも全体を見てテキパキ動いていてすごいですね」
「みんなが雑務に時間をかけていたら業務が回らないですもんね」
どの言葉もお世辞ではなく本心です。
「○○さん達が清潔を保って下さるから、他の職員は別の業務に集中する事が出来るんですね。」
「○○さん達なら現場を任せられる安心感があるから、その間に丁寧な掃除が出来るんですね」
どちらも否定せず、どちらも素晴らしい。
その気持ちを素直に伝える事が出来れば派閥には入らなくても済むでしょう。
それだけではない派閥の理由
なぜ派閥が出来るのかと考えた時、家事は特に顕著に表れる部分です。
しかし理由はそれだけではありません。
介護職と言う仕事にいかに真剣に取り組んでいるか
これも大きな理由の一つです。
長い人生を生きて来られた高齢者。
その方の人生最後の部分をその方らしく生きる事のお手伝いをする仕事。
それが介護職です。
この事に真剣に向き合っている介護職員とそうではない職員とでは明らかな違いがあります。
例えば高齢者に対しての言葉遣いであったり、高齢者に向かって「かわいい」など失礼だと考えたり、幼稚園のような遊びは失礼だと考えたり、問題提起はしても悪口は言わないようにしたり。。。
真剣に向き合っている職員は当然のことだと考える事が、そうではない職員にとっては堅苦しく感じるのです。
介護職として働くにあたり、根本的な考えが違う場合には派閥を招いてしまう事も自然な流れなのかもしれません。
この部分の解決策としては、きちんとした研修がなされている事業所で働くこと、
自分自身も高齢者を敬いプロとしての自覚をしっかりと持って働くことが必要です。
30代40代の力が必要!介護の仕事が人生を変える!
自分はずっとやってきている!とい自負のある家事という分野。
この仕事は責任ある仕事だ!という仕事に対する自覚。
介護職員同士の人間関係の悪化はこのようなことのすれ違いから起こるのです。
しかし、あなたもそれなりに人生経験をしてきたはずです。
先に述べたような事がトラブルに繋がるのだと分かっていればそれなりに対処することができるでしょう。
むしろ、そのような家事を日ごろから経験している方が強みとなります。
いわば30代40代の女性にこそどんどん挑戦してほしい仕事なのです。
辛かった。けれど続けられた介護の仕事
実際に介護の仕事を始めると、職員同士の問題だけではありません。
業務内容が多岐にわたる介護の仕事には時に衝撃的な体験も含まれます。
Iさんは認知症が酷く施設に入所されていました。
元々Iさんは巷でも有名な働き者。
義理人情にも厚く地域の人々や職場の人々からも慕われていました。
戦争を経験し、戦後には郵便局に勤めていたIさん。
入所後も笑顔が素敵で社交的なおじいちゃんでした。
しかし、Iさんには職員の頭を悩ませる癖があったのです。
収集癖です。
何を収集するかと言うと、自分の使用済みのオムツです。
たんすの引き出しやベッドの下など、あらゆる所に隠しておいて、職員の目を盗んでは食べてしまうのです。
使用済みのオムツを・・・です!
Iさんの身体も心配ですし部屋も臭くなる一方。
どうすれば機嫌を害さずオムツを回収する事が出来るか・・・。
職員が部屋に入りオムツを取りに来たのだと察知すると、普段のIさんからは想像もつかないような凶暴なIさんになってしまいます。
怒鳴り散らかして唾を飛ばすわ噛みつくわ爪を立てて引っ掻くわの大騒ぎ。
とにかく恐怖で仕事に向かうのが憂鬱でした。
でもある時、部屋を訪ねてもオムツの話はせず、にこにこと退室。
その後も何度かそれを繰り返すうちに、職員が部屋を訪ねただけでは怒鳴らなくなったのです。
その時、私たち職員もマナーがなっていなかったのだと気付きました。
いくら施設であってもそこはIさんのプライベートな空間であり、オムツの収集癖は戦前~戦後を苦労して生き抜いた、今までのIさんの人生の延長だと気付いたのです。
私たちは今まで、オムツを集めるのも食べるのもいけない事だという自分たちの常識でしかIさんを見ていなかったのです。
そこで、Iさんの考えを尊重するように変えていきました。
すると、Iさんは職員の穏やかな口調に耳を傾け、オムツを隠しておく事や食べてしまうことについての悪影響に対し、しっかりと納得したうえで全てを渡して下さったのです。
一緒に考え悩んだ職員一同感極まる思いでした。
その後Iさんとはしっかりとした信頼関係を結ぶ事が出来ました。
(たまには隠して喜んでおられたようですが・・・)
この経験をきっかけに、人の意識というのはこちらの考え方一つで全く違ったものになるのだという事を学び、またその奥深さに衝撃を受けました。
認知症だからではなく、誰に対しても同じことが言えるのではないか・・・と。
介護職として働くことによって、今まで以上に人間というものに興味を持ち、潜在意識・潜在能力というものにも興味が出ました。
結果、自分の人生をより楽しみ充実したものにする事が出来、なお且つ技術が身に付き、お給料もいただける。
そして何より長く安定して続ける事が出来る仕事である。
私が介護職を続けようと思ったきっかけになった体験です。
家族にも活かせる介護のチカラ
このように、介護職の経験を重ねれば重ねるほど色々な経験をする事ができ、それに伴って介護職に対して奥深さを感じる事が増えていきます。
実はこの経験、普段の生活の中で存分に活かす事が出来ます。
私自身、家族間でトラブルが起きた時にも一呼吸置いて考える余裕を持てるようになりました。
相手がなぜそうなのか、という事ももちろんですが、自分が今どんな出方をすると相手の心に響くのか。どんな出方をすると相手を逆上させるのか。
常に冷静でいられる自分。
知らず知らずのうちに、そんなチカラが身に付いていたのです。
このチカラ、元々他人である主人はもちろん、子育てをする上でも本当に必要なチカラだと実感する毎日です。
介護の仕事のみならず、自分の人生に於いても奥深さが増していく。
そんな気がしています。
だから今、介護の仕事
介護職とは人の手によって行われる人間相手の仕事です。楽しい事もあれば辛い事もある。
だけど、それこそが人生の醍醐味ではないでしょうか。
様々な人生を生き抜いて来られた高齢者。
30代40代の女性ならではの温かみや経験は、高齢者が自分の人生について語ったり、ちょっとした事をお願いしたり等、親しみやすさを感じて下さるはずです。
男性や若い女性には足りない部分だともいえるでしょう。
「この年齢から新しく挑戦なんてできるかな」
と心配する必要は全くありません。
そんなあなただからこそ、介護の世界に来てほしいのですから。
挑戦してみませんか? 介護職。