無職から介護士への転職体験談 30歳の女性Kさん
介護への転職「ニートから介護士へ」
介護という仕事の特性から、この業界にのめり込む人は結構多いようです。
実際筆者も介護職への転職者でした。
人生にやりたい事を見い出せず、仕事もしていなかったニートと呼ばれる若者が介護にハマるいきさつをお話ししましょう。
キレイな内容ではありませんが、今の若者らしいハマり方をしています。
転職の経緯
ニートであった30歳の女性Kさんです。24歳くらいまではOLさんだったと言います。
結婚を考え、地元に帰郷したのですが中々仕事に就かないままぶらぶらしていたようです。
いずれは結婚するんだからとタカをくくっていたようですね。
実際はそう上手くいかず、ずるずると実家で生活していたようです。
仕事をしなくなって5年あまり、さすがにまた仕事をしようと考えたようですが、現役生活から離れすぎており中々仕事をする踏ん切りがつかなかったのです。
やはり社会から離れて時間が経過すると、だんだん自分に自信が無くなったりするものです。
介護をやろうと思うきっかけから、実際の仕事が順調な軌道に乗るまで結構時間を要しています。
介護をやろうと思った動機
元々親が介護施設の事務員をしていたことから、軽い気持ちでその施設のボランティアに参加したそうです。
時間もあったし、昔からばあちゃん子だったそうですから抵抗もなく、興味本位で参加したのでした。
現場にボランティアとして行っても、させてもらえる仕事は結構簡単な内容で、この時は浴室横の洗濯物たたみがメインだったそうです。
浴室を出入りする介護職員の中に偶然同級生がいたそうです。
Kさんは既に衝撃を受けていたのでした。
地元に帰ってきて特にしたい事もなくニート化していた自分に比べ、バリバリ現場で介護している同級生を見ると少し恥ずかしかったとも言います。
ボランティアに来た程度では高齢者に触れるなんて事すら出来る訳もなく、触っただけで壊してしまいそうな感覚すらあったそうです。
「何も出来ない自分」が非常にみじめで、無力さを痛感したのでした。
ボランティアから介護をやろうと考えるようになった
色々な感情が生まれたボランティア経験でしたが、どこか「介護をしてみたい」と考えるようになったKさんです。
施設に何回かボランティアに行くうちに、介護の事を少しずつ知る事となりました。
介護の手法はもちろん、仕事として介護をするには免許が必要であること、これらを学んだのです。
「自分に出来るだろうか」という気持ちと同時に、ボランティアにも足が向いている自分がいたそうです。
回数を重ねるうちに「この仕事なら出来そう」と考えるようになり、社会人としての新たな道は介護人としての選択でした。
介護初任者研修への応募に至ったのでした。
今までの経験もある30代、現場実習を通して感じる「辛さ」
これまでボランティアとして介護に携わってきたKさんでしたが、今度は専門職としての道を歩むことにした訳です。
今までやってきたボランティアとは違い、当然専門的な知識から現場を通した実習までこなさなくてはなりません。
介護の資格取得はどちらかというと詰め込み式の座学が多く、その中身は医療的分野とも共通する部分がたくさんあります。
介護どころか医療の経験もないKさんにとっては、未知の世界に足を踏み入れたような感じだったそうです。
この資格取得を目指していくうちに、経験が無い事から「やっぱり無理かも」と考えるようになってしまいました。
ある時「ここで資格を取っても現場に行ったらどうせ最初から役なんて立たない」と、講師の方に言われました。
ますますネガティブになる一方のKさんに対し、「だから入り口に立つための資格でしかないと考える方が楽に受けられるでしょ?」とさらに講師が言ったそうです。
この言葉で楽になったKさんは、資格に対する見方が変わったのでした。
心構えの資格、そんなスタンスになったKさんでした。
無職から介護現場での活躍までは程遠い
元々数年無職ニートだったKさんにとっては、仕事をする事自体が不安だった訳です。
社会に復帰して自分が上手く周りとやっていけるのか、そんな心配がありました。
介護の仕事に対してはボランティアである程度経験させてもらったことから、この心配は難無くクリア出来たようです。
しかし資格を取得して、いざ現場に就職して仕事となると色々な大変さにも直面するものです。
勤め始めて1か月、夜勤もスタートしたKさんは休みがちになってしまいました。
介護の世界ではシフトをこなせないと居場所がなくなる
休みがちとなったKさんは「現場シフトに穴を空ける」事になってしまい、立場が悪くなっていきました。
以前働いていたOL時代は、シフトではなかった為さほど重要とは捉えていなかったのです。
介護はペア作業も多い仕事です。
ペアとなった先輩から苦言を呈されてようやく気付いたそうです。
しかしその職場ではどうしても居場所がなくなってしまい、結局退社となったのでした。
介護の夢を諦めたくなかったKさんは、現在の筆者がいる施設の門を叩いてきたのです。
無職からの脱出!まずは「仕事に行く事、足を向ける事」が重要な介護の仕事
他の仕事もそうかもしれませんが、介護においてはまず職場に行く事が非常に重要です。
前日仕事で辛い事があったとしても、それは介護高齢者と職員の間における事であったりします。
そしてその「辛い事」は大半が勘違いや、時間が解消してくれるものです。人間と人間の関係ですから。
その事を重々理解したうえで、Kさんは新しく介護を再スタートさせました。
職場が変わっただけで同じ介護をしているとはいえ、「頑張れそう⇔行きたくない」の葛藤はあったそうです。
しかし何があっても今回は仕事に来るようにしたと言います。出来る人には当たり前でも、人によっては「仕事に行く事自体が辛い」事もあります。
体調が少々悪くても必ず笑って介護を始めたKさんは、現在2年ほどの経験ですが副主任まで引き上げられました。
介護の仕事はモチベーションが第一 30代から自分を変える事も十分できます!
笑顔でなくても仕事は出来る、そんな業種はたくさんあります。
でも介護においてはそうではありません。
介護自体の技術力や能力は当然個人差があり、見る人からすれば「上手下手」があるものです。
ですが何より重要なのは職場の空気を大事にするモチベーションです。
技術や経験は2の次であると言えます。
どんなに経験や技術があっても、介護の職場では「笑う事」が出来ないのではそれらの能力は活かしきれません。
相手が人間である仕事は全て、お互いのコミュニケーションは必須であると言えます。
そのためKさんのように初心者でも、まずはやる気と言うよりはモチベーションを上げてきてくれる人、ムードメーカー的な存在がキーマンになってきます。
介護の世界においてはあまり「やる気」というのは必要ではなく、揺るがない気持ちとかそういうのが重要です。
高齢者の生活ペースに合わせた仕事になりますから、介護する側からガツガツというのは似合いません。
まずはモチベーションなのです。
意外と役に立つOLの経験
OLさんにも色々な事務職があるのでしょうが、ことのほか事務系には強い訳です。
大手企業でやっていた事から、事務系の整理は得意としていました。
介護には必ずついて回る「記録」というものがあります。
これは「介護をした証拠」とも言える重要な物で、これがないと介護が成立しないとまで言えます。
介護の現場では色々な記録物が存在し、そしてその記録を管理しているのは一般的に施設内のケアマネージャーや管理者が担っています。
ですが「現場から管理側までの記録の受け渡し」が非常に手を焼いており、せっかく現場で記録した内容も保存状態が悪かったりします。
現場での介護の合間に取られる記録ですから、書類などはボロボロだったりします。
KさんはOL時代の経験から、この記録についても気になっていたそうです。
例えば排せつの回数等が記入出来る記録はたいてい現場にあり、その保管状況は悪いと言えますし、プライバシーとしてもどうでしょうか。
そういった部分に力を発揮し始めたKさんでした。
施設内の記録物が新たに発生したりする時、Kさんはたたき台となった書類をもっと書きやすく仕事がしやすい状態に改善してくれます。
これまでの経験も活かし、そして介護士として今Kさんは奮闘中です。
この経験が介護に活かせるか?と考えると、非常に限定的であまり幅広いとは言えません。
ですが、介護を始めてみて「活きる経験に変化する」事はよくあります。
介護の業界がその事に気付いていない事、そして介護経験の無い周囲の人間もまた同じです。
確かに「自分の経験を活かそう」と考えるのは当然良い事ですが、まずは介護をやりたいと考える事が大切です。
今回のように社会から長い時間離れていたとしても、介護の魅力が社会復帰を果たしてくれたりします。
それはやはり「実は介護は身近なもの」である事が一番の要因とも言えます。
転職者が活躍している介護の現場は、これからもますます転職者によって発展する可能性を秘めています。